はじめに
私たちは、働いて収入を得ることを当たり前のように考えている。
時間を使って仕事をする。仕事を終える。対価として給与や報酬を受け取る。
もちろん、これは毎月の生活を支える大切な仕組みだ。日々の仕事があるからこそ、生活を維持し、将来について考える余裕も生まれる。
しかし、ふと考えることがある。
働いて収入を得ることと、働くことを通じて将来の収益源を育てることは、同じなのだろうか。
この問いが、私にとって「労働者的な発想から、事業家の発想へ」というテーマを考える出発点になった。
1. 労働による収入には、時間という制約がある
時間を使って働き、その対価を受け取る。
この仕組みは分かりやすい。一方で、自分が使える時間にはどうしても限りがある。
働く時間を増やせば収入が増える可能性はある。しかし、生活に必要な時間や休息まで削り続けることはできない。
そこで、働く時間を増やす以外の方法を考えてみる。
例えば、仕事で得た経験を記録する。何度も行う作業を手順書にする。調査した情報を整理して、次の仕事でも使えるテンプレートにする。
こうした取り組みは、その場限りの労働とは違う価値を生み出す可能性がある。
重要なのは、労働を否定することではない。
労働から得られるものを、その日の収入だけで終わらせないことだ。
2. 事業家の発想とは何だろうか
事業家の発想とは、必ずしも会社を設立したり、大きな資金を用意したりすることではないと考えている。
目の前の仕事をしながら、そこにある需要、改善できること、繰り返し利用できる知識や仕組みを探す。
そして、得られた知見を元に持続可能な次の仕事やサービスに活かしていく。
例えば、企業情報を調査する仕事を受けたとする。
依頼された情報を集めて納品すれば、その仕事は完了する。
しかし、調査の過程で作った分類方法や確認手順を整理すれば、次の調査にも使える。さらに、その方法を汎用的なテンプレートにすれば、別の仕事や商品に横展開や発展させられるかもしれない。
同じ仕事でも、何を成果として残すかによって、将来につながる可能性は変わってくる。
3. 経験を知識に、知識を資産に変える
私が考える事業づくりの流れは、次のようなものだ。
労働 → 経験 → 知識 → 仕組み → 事業資産
労働を通じて経験を得る。
経験を振り返り、再利用できる知識を取り出す。
その知識を、手順書、テンプレート、記事、デジタル商品、サービスなどの形にする。
そして、需要があるものを改善しながら育てていく。
もちろん、作ったものが必ず売れるわけではない。記事を公開しても読まれないかもしれないし、テンプレートを作っても需要がないかもしれない。
だからこそ、仮説を立て、小さく試し、結果を確認することが重要になる。
事業資産とは、単にファイルやWebページを作ることではない。
誰かにとっての価値があり、将来の事業活動に再利用できるものを、少しずつ積み重ねていくことが事業資産であり資本になると考えている。
4. 今ある働き方を維持しながら、別の可能性を育てる
新しい事業を始めるために、今の仕事を辞める必要があるとは限らない。
既存の仕事から生活の基盤を得ながら、空いている時間に小さな実験を進める方法もある。
私自身も、現在の働き方を維持しながら、個人事業であるM's R&Dの収益源を考えている。
オンラインで調査業務を受注する。仕事を通じて得た知識を整理する。Webサイトにコラムや実験記録を蓄積する。そこから、将来提供できるサービスやデジタル商品を探していく。
どれも、すぐに大きな収益を生むと決まっているわけではない。
それでも、日々の活動から得られるものを記録し、次の実験に活かすことはできる。
大きな変化を一度に起こすのではなく、今ある基盤を守りながら、少しずつ別の可能性を育てる。
それも、一つの事業戦略だと思う。
5. 自分自身の活動を、研究対象にする
M's R&Dでは、事業づくりそのものを研究対象として捉えてみたい。
何を試したのか。なぜそれを選んだのか。どのような結果になったのか。何を改善できるのか。
その記録を残していけば、自分自身の経験が、次の判断に使える知識になっていく。
さらに、そこから得られた一般化できる知見をコラムとして情報発信すれば、同じように働き方や個人事業について考える人にとっても、参考になるかもしれない。
自分の活動を単なる日常として終わらせるのではなく、観察し、考え、記録し、改善する。
その繰り返しを通じて、自分の事業に必要な知識と仕組みを蓄積していく。
これが、M's R&D — Experimental Journalで実践していきたいことの一つだ。
おわりに
労働者的な発想から事業家の発想へ。
それは、労働をやめることでも、すぐに大きな利益を得ることでもない。
目の前の仕事から収入を得ながら、その経験を次の価値へとつなげていくこと。
今日得た知識を記録する。繰り返せる作業を仕組みにする。小さなアイデアを試す。結果を振り返り、改善する。
その積み重ねが、将来の事業を支える資産になる可能性がある。
労働から収入を得る。経験から知識を得る。知識から資産を作る。資産から事業を育てる。
この考え方を、M's R&Dの一つの事業思想として、これからの実践を通じて検証していきたい。